「余剰次元」と逆二乗則の破れ
『「余剰次元」と逆二乗則の破れ』
我々の世界は本当に三次元か?
村田次郎 著
BLUE BACKS
宇宙の研究者には理論系、観測系、実験系などの科学者がいる。この本の著者は実験系に属する。「余剰次元」とは勿論、超弦理論・M理論での10次元空間のうち 3次元を超える次元のことを言う。従って、4次元以上の次元の存在が確認されれば超弦理論の証明にもつながる。
重力やクーロン力は逆二乗則に従って減衰す るが、これは空間が3次元であることによる。一般に超弦理論の研究者達は4次元以上の次元はプランク長(10のマイナス35乗メートル)程度にコンパクト化されていると考えているようだが、ADD模型と呼ばれる提案ではミリメートル程度の場合もありえるとしている。
超弦理論によれば宇宙を構成する4つの力のうち重力以外の力を媒介するひもは3Dブレーンに吸着されているが、重力に関するひもはリング状で4次元以上の空間に作用する。重力は空間の次元数に応じて距離減衰するので3次元で観察される重力は小さく見える。つまり、小さくまとまった余剰次元に力が及んでいるのであれば、4つの力のうち重力だけがなぜこれ程までに小さいのかも理解でき、4つの力を統合できることにもなる。
そんなわけで、至近距離で重力の逆二乗則が破られているのではないかということで、著者達はミリメートル単位 以下での重力を計測しようとしているわけである。実験の背景となる理論を含めて非常に分かりやすく解説されているので、一読をお勧めしたい。