不自然な宇宙
『不自然な宇宙』宇宙はひとつだけなのか?
著者:須藤 靖
BLUE BACKS
この本は今年になって出版されたばかりであり、著者についても放送大学の「宇宙とその進化」で「一般相対論的宇宙モデル」の講義をしていたことを覚えている。
結論から言えば、宇宙はひとつだけ(ユニ)でなく多数(マルチ)あることが考えられる。またこの宇宙は物理学的にみると極めて不自然なものである。この不自然さを説明するには必然性からの説明は無理そうなので、偶然性つまり人間原理的な説明が必要になるということにつきる。様々なレベルのマルチバースが紹介されたりしているが、元々朝日カルチャーセンターでの講義をもとにした著作物ということもあってか、語り口は分かりやすい。
しかし、レベル2のマルチバ―スがどのような論拠から提案されるようになったとか、そのバックグラウンドにあるインフレーション理論との関係、あるいは物理定数の異なる無数の宇宙の存在が張弦理論などから示どのように示唆されるかといった話の説明がないなど‥物足りなさを感じざるをえない。