ダークマターと恐竜絶滅
『ダークマターと恐竜絶滅』
著者:リサ・ランドール
発行所:NHK出版
25年ほど前に『恐竜はネメシスを見たか』という本を読んだ。6600万年前の恐竜絶滅は直径10KMもの巨大隕石の襲来によるものであるが、巨大隕石の襲来には統計的に有意な周期性があり、この周期性の原因が未知のネメシスと命名した星がオールトの雲をかき乱すからではないかという話であったと記憶している。因みにネメシス説は未だに該当する星が発見されていないことなどからいまではボツになっているようだ。
リサ・ランドールはこれまでのダークマター候補の説明が小規模スケールでの観測を説明できていないことからダブルディスク・ダークマター(DDDM)という着想によって、これらを説明できるとしている。このダークマターの一部が銀河面に薄い円盤状になっている筈だという。太陽系はこの銀河面を上下に振幅しながら銀河面を回転しているので、周期的にこのダークディスクを横切ることになり、その際にオールトの雲がかき乱されて、多量の彗星が太陽の方に向かって突っ込んでくることになる。この一つが6600万年前の恐竜絶滅の原因であるという。
このDDDM説は、実際に観測衛星ガイアがダークマター円盤の重力の影響を計測することで裏付けされるかもしれないとのことである。
久々に、説得力のあるおもしろい説が登場したものだが、読み応えの本でもあった。