マルチバース宇宙論入門
『マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ<この宇宙>にいるのか』 著者:野村泰紀 発行所:星海社新書
旅のお供に最新の入門書でも‥と思って読んだ本であるが、久しぶりに新しい知見が得られた気がする。 真空のエネルギーの観測値が理論的計算値の120桁も小さいこと、6つのクォークやレプトンの不規則な質量の値、様々な物理定数が何故こんなにも銀河や人間が存在できるほど都合よく微妙に調整されているのか‥などについて物理学はこれまでうまい説明ができてこなかった。 インフレーション理論は永久インフレーションと物理定数の異なる無数の宇宙の存在を予言する。超弦理論は6つの余剰次元によって500桁もの物理定数の異なる宇宙があり得ることを示唆している。 であるならば、こんなにも都合よくできている宇宙があっても不思議でなない‥ということになる。 この本の目新しいのは「永久インフレーションと無限大」という問題を「エヴェレットの多世界」や「ブラックホールの量子力学」の解説を通して、量子的マルチバースについて論じている点である。 また、このマルチバースの間接的な探索方法として「宇宙の負の曲率」の観測などについても触れている。絵空事に思えていたマルチバースのリアリティが垣間見えてきたような印象を受けた。